動機はいつだって不純

南アフリカ・ヨハネスブルグで暮らすノマドワーカーのつぶやき

南アフリカ・ヨハネスブルグから#Blacklivesmatter 【写真あり】

こんにちは。

備忘録的に綴らせてください。

 

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アメリミネソタ州で起こったジョージ・フロイド氏の殺害から、世界中で広がりを見せている#blacklivesmatter (このハッシュタグ自体は2013年からあり、目新しいものではありませんが)

 

今週末は、南アフリカのハウテン州(行政府のプレトリアや、経済都市ヨハネスブルグのある州)の各地で集いやデモがありました。

 

#blacklivesmatter を知った日

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私自身がこのハッシュタグを知ったのは、就活生をしていた2014年でした。

大学1年生の時に、カナダでサマースクールを受けに行った際に、ホームステイをした家庭がユダヤ人でイスラエルからの移民だったことから中東地域に関心を持ち、それ以降中東に関わる学生団体に入り(代表もしていました)、何度も現地に足を運んでいた私。

中東地域のニュースは意識的に収集していたし、そのころちょうどISISが台頭してきた時期で、世界中でイスラモフォビアが話題になっていました。

それがなくても中東に関わる活動をしていると、「宗教?」「政治の団体?」といろいろ偏見による言葉をかけられることはあったし、アラビア語のテキストを電車で見ていた友人は「なんでテロリストの言葉を勉強するの」と声をかけられたそうです。

そんな学生時代を過ごしていたし、イスラエルパレスチナ自治区に行くうちに、差別的な事象や発言に出くわすことは少なからずあって、差別や偏見に対する憤りは常に持っていた気がします。

 

就職活動をし始めて、それ以外のニュースをちゃんと追おうと思ったときにヘッドラインに出てきたのが、このニュースでした。

edition.cnn.com

警官が、黒人の少年を射殺したこの事件。

こんなことが、しかもアメリカで、まだ起こっているの!?

衝撃を受けたのを覚えています。このことをよく覚えているのは、説明を聞きに行った企業の人に「最近見たニュースで印象に残っているものは?」と聞かれて、この事件が衝撃的だったこともあり、日本であまり報道されていないのを知っていたけど、この件について話したから、というのもあるかもしれません。

 

 

今回の件や#blacklivesmatter については、日本でも報道されている?(南アフリカにいるので実感としてはわかりませんが)みたいですし、SNSやnoteで多くの人がまとめをしてくれているので、私からは多くは語りません。

note.com

▼これは、学生時代同じダンスサークルで踊ってたまりが書いた記事

note.com

 

アパルトヘイトの傷が残る南アフリカ

 

今回の件で、アメリカ史を振り返り「"黒人"が人権を認められた歴史はまだ短い」だったり「祖父母の代ではまだ人権を認められてなかった」みたいな記述をいくつか見かけましたが、そうすると1994年に初めて民主的な選挙を行い、ネルソン・マンデラが初の黒人大統領になった南アフリカでは、まだ全人種の人権が認められてから26年しかたっていません。

私は1993年生まれなので、生まれたときはまだアパルトヘイトが完全には終焉していなかったと思うと、まだまだ民主化の歴史が浅いのです。

 

私には南アフリカ人のパートナーがいますが、彼はXhosa族の出で、父親の世代はまさにアパルトヘイトの抵抗運動に参加していた世代です。(実際に義父は、近隣諸国に行って抵抗運動のためのトレーニングをしたりしていたそう)

人権を認められていなかった時代を記憶している人は多いです。実体験をもって、アパルトヘイトを語ることができる世代にとっても、この#blacklivesmatter は無視できないものでしょう。

 

構造的な格差、という面ではまだまだ課題が残っています。

ネルソン・マンデラのリーダーシップや平和的な政治は、評価されている一方、人種間の経済的な格差についての課題は、次の世代に残した、とも言われています。

アメリカとは違って、南アフリカでは、政治の上層部や警官にアフリカ系の人が多く、またアファーマティブアクションが取られているので、人種差別という意味では、ひょっとしたらましなのかもしれませんが、多くの人の心を動かす出来事であったことには間違いありません。

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4人の名前は、南アフリカで警官の暴力によって亡くなった方

人種間の格差だけでなく、南アフリカでも警官の暴力は問題になっています。

アパルトヘイト中はもちろん、最近もロックダウン中にタウンシップ(旧黒人居住区)の住人が警察に殺害されて、大きな話題となっていました。

警察の暴力への反対、という意味合いも大きくあります。

 

 

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かくいう私のパートナーも、事件を目にした日から、よく眠れない、SNSを見てしまう、などかなり動揺していました。

思っていたよりも、ひどいアメリカの現状に、行き場のない悲しみや怒りに支配されてしまっているようで、見ていて辛くなるものがありました。

 

今回、私たちもサインボードを準備して、ヨハネスブルグのCBDにあるコンスティチューション・ヒルに行ってきました。

 

小さな一歩でも何かアクションしよう。そこにいる人と繋がろう。

次のアクションは、またそのあとに考えればいい。

そう思って、行き場のない感情を持ったまま、CBDに向かいました。

 

6月6日~7日の集い@ヨハネスブルグ

友達の一人が、インスタグラムでシェアしていたことがきっかけで、この集まりに行きました。

行政府であるプレトリアのほうが大規模におこなわれていたようですが、ロックダウン中でもありますし、距離があるのでヨハネスブルグの会場へ。

 

www.instagram.com

 

その他にも、お昼あたりの時間には、SOWETOのヘクター・ピーターソン記念館でも集まりがありました。

ヘクター・ピーターソンは、アパルトヘイト後期、有色人種へのアフリカーンス語オランダ語系の"白人"系南アフリカ人の言語として知られる)必修化への反対する学生運動に参加していた学生です。武装していない学生たち相手に、警察が発砲し多くの人が亡くなり、その犠牲者の一人。

人種差別・警官の暴力を象徴する事件です。

 

 

コンスティチューション・ヒルの集い

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私たちは、Sowetoの集まりには間に合わず、コンスティチューション・ヒルに行きました。

服装は黒。サインボードか花、キャンドルを持ってくること。

 

そこには、数は多くなくとも、さまざまな肌の色、バックグラウンドを持った人が集まっていました。

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レイシズムパンデミックだ。All Black Lives Matterとあるのは、他のアフリカ諸国から来た人に対するゼノフォビアを念頭に置いた言葉だろう

南アフリカは、サブサハラ以南のアフリカ諸国の中でも経済発展していることもあり、他のアフリカ諸国から働きに来る人も多いです。

一方国内の失業率は、全体で30%、若者に限ると50%ほどになるといわれ(コロナ前の話なので、今はもっと多いのではないでしょうか…)、そうしたいら立ちが外国人労働者に向かいしばしば暴動が起こります。このゼノフォビア南アフリカの大きな問題の一つ。

▼下記のような記事もありました―「どのブラックライフが重要だって?私たちではない」南アフリカの外国人が述べる

select.timeslive.co.za

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沈黙は暴力だ

写真に収め忘れましたが「アメリカが、アフリカ大陸の1国だったら、経済制裁されていただろう」と、南アフリカらしいサインボードもありました。(アパルトヘイト終盤、南アフリカは国際的に人種差別的な政策を批判され、経済制裁を受けました)

 

 

「ここ(南アフリカ)にはまだまだ不正義が残っている。あまりに辛くて1年前に弁護士を辞めて、旅に出ていたんだ。」

その場にいた、元ヨハネスブルグ市の弁護士(ヨーロッパ系)だという方と話をしました。弁護士や裁判官などの職業は、南アフリカでも肌の白い人が多い職種だそうです。

 

「例を挙げるときりがないんだけど、例えば白人の酔っぱらったドライバーが、バイクに乗っていたタウンシップ出身の男性をひき殺した事件があったんだ。道路を逆走してね。被害者には子どもが2人いて、一家の稼ぎ頭。でも法廷では運転手には重い罪を着せなかった。たった3年。しかも猶予つき。彼はもう釈放されて自由の身。

 一方で、今は違法ではなくなった大麻の所持。アパルトヘイト時代、大麻所持で捕まった黒人の人の多くが、今でも刑務所で服役しているんだ。

 これは正義なのか?」

 

アパルトヘイト時代の大麻の所持については、肌の色によって扱いが異なったようです(聞いた話なのでしっかりと事実確認できてませんが…)。

白人の場合、没収や罰金程度である一方、有色人種、特に黒人は牢獄されていたようです(しかも、今でも服役中)。

 

 

また、今の南アフリカで、こうした構造の一番の犠牲者になるのは、肌の色というよりも、タウンシップなどに住む貧困層です。

 

彼らの中には、いつも携帯のデータを買うのに十分なお金があるわけでも、フォルダに容量があるわけでも、バッテリーがあるわけでもありません。

都心のデモに参加するにも、交通費がかかります。

選挙に行くにも、仕事が休めなかったり、交通費や時間を費やさない人もいます。

 

 

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なにか、大きな壁を見せつけられたような、言葉にできない、もやもやとした気持ちがあります。

 

私も南アフリカに暮らす東アジア人。どう見てもマイノリティです。

パートナーやその家族は"黒人"と呼ばれます。

 

日本に帰ったって、異なる人種に対する嫌悪感を持つ人はいます。

子どもが生まれたら、日本では"ハーフ"と呼ばれます。

女性であることも、時に生きる上でマイナスに働きます。

 

とはいえ、私自身の中にも偏見がないというとウソになります。

偏見を一切持っていない人は、世の中にはいないでしょう。

 

ただ、生まれて、ありのままで生きているだけで、苦しみ、命の恐怖を味合わないければならないひとが、なくなりますように。