動機はいつだって不純

南アフリカ・ヨハネスブルグで暮らすノマドワーカーのつぶやき

南アフリカ、内務省(Home Affairs)との闘い

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ご無沙汰しています。

先月、南アフリカにて、結婚手続きを完了しました。
南アフリカ内務省(Home Affairs)で手続きをするのですが、なかなか大変だったので、記録としてブログを書こうと思います。

途上国あるあるなのか、アフリカあるあるなのか、結婚やビザなど役所にお世話になったことがある人は共感できるところもあるかもしれません笑

悪名高きHome Affairs

Home Affairsといえば、南アフリカ人が名前を聞くと、ほとんどの人が苦い顔をする役所。ビザの手続きなどを行うのもこの機関です。

南アフリカで結婚するには避けては通れないところ。

ちなみに、日本では結婚=入籍ですが、入籍ができるのは戸籍があるから。日本や韓国など一部の国を除き、ほとんどの国では戸籍制度はありません。
南アフリカの結婚に関わる文化は、人々のバックグラウンドによって異なります。

なにせ、アフリカ系、ヨーロッパ系、インド系と、人種・宗教的にも多様な人が住んでいるので、アフリカの伝統式、西洋式の式を挙げる人、ヒンドゥー式などなど結婚スタイルも実に多様。
国が認める結婚の方法は、民間が行うもの行政が行うものと2種類あるようです。
民間のものというのは、例えば特定の宗教のスタイルに則って行うもの。教会で誓うことで結婚するのはこのパターン。正式に認められている司祭などが執り行えば、のちに役所に提出することで国からも結婚が認められます。
私たちは、特定の宗教を信仰しているわけではないので、行政のやり方で結婚することにしました。

◆大まかなプロセス(プレトリアのとある支店の例)

ステップとしては、以下の通り
①最寄りのHome Affairsにて必要書類を確認
②必要書類を用意し、結婚インタビューのアポイント予約をする
③結婚インタビューの日程が決定したら、事前にイミグレーションインタビューを受ける資格を得るため、イミグレーションインタビューを受ける
 ③-1 イミグレーション課に行き、インタビューを受けるまでの手続きを確認する
 ③-2 私たちの住んでいる場所の最寄りでは、結婚インタビューの1週間ほど前にイミグレーションインタビューを受けることができるとのこと
 (②の書類を提出時に書類とプロセスを確認)
 ③-3 ②で用意した書類をもって、インタビューを実施
④結婚インタビューを実施
 ②の書類+イミグレーションインタビューの結果+2人の証人に同行してもらう(証人はID持参必須)

手順だけ書くとシンプルですが、実際にやってみて、なぜこんなにも悪名高い部署であるかがよくわかりました。

そもそも論でいうと、見出しに「プレトリアのとある支店の例」と書きましたが、これ、支店によってプロセスは異なると思われます。そもそもデータや書面で明文化されていなかったりするので、プロセスが俗人的。違う支店で手続きしたら、違うことを言われることは十分予想できるので、万が一これを参考にする人がご注意を。

 

経験談を共有すると、③-3で大きくつまずきました…
事前に確認したのにも関わらず「この書類は証明のハンコが必要だ」「忙しくて見ることができない(ナイジェリア国籍の人※おそらく賄賂持参)の対応で忙しそう)ので後日来い」等々…
2日通い、合計12時間ほど費やすはめになりました…
営業時間が平日16時くらいまでなので、これは普通の会社務めの人には厳しいプロセスです、本当に…

証明のハンコというのは、パスポートやIDなどのコピーに対し、それが本物のコピーであることを認める警察のcertificationです。
(本来は)警察に、原本と一緒にコピーを持っていくことで、証明ハンコを無料でおしてくれます。
ただし、この証明プロセスは穴だらけで、原本がなくてもハンコを押してくれちゃいます。(何なんだ…)


◆私たちに起こったこと

具体的に、③-3でなににつっかかったというと、①~③-2の段階では、私の両親のID(パスポートもマイナンバーもないので免許証)コピーは「Just copy」でいい、複数人の職員に書類がそろっていることを確認してもらっていました。

しかし、③-3を対応する部署の職員が、いきなりハンコがないといけない、の一点張り。それ以上のプロセスを進めてくれなかったのです。

 

しかも、③-2のプロセスまでは、南アフリカ入国後1か月以内にスピーディーに進めたのですが、③-3は「結婚インタビューの1週間前でないと対応しない」と言ってきたので、今更書類に不備がある(しかも日本で用意しないといけないもの)といわれても、結婚インタビューやビザの関係上間に合いません…


ハンコを要求してきた職員は若い女性で、③-1.2のときに確認した人と異なります。
日本にはパスポートコピーなんかに証明する文化はないので、ネットで調べたところ、渋谷に1件証明してくれるところがありました。
が、埼玉に住む両親に渋谷まで出向いてもらい、証明をしてもらい、郵送してもらったら、結婚インタビュー間に合いません。

(ちなみに、結婚インタビューの予約は常に1か月半以上先まで埋まっているので、再予約すると私の短期ビザは切れてしまします。)

そのことを伝えたところ、「ハンコのコピーで大丈夫。スキャンを送って」
あれ、何のためのコピー証明なんだ…さらにコピーしたら何も証明できないのでは…)と思ったことは置いておいて、結婚インタビューまで間に合うわけありません。
両親が埼玉に住んでいるので何とかならなくもないかも?しれませんが、地方に住んでたらぼほゲームオーバー。

あれ、これただのいちゃもんなのでは…と思い始めます。

※ちなみに日本で証明印を発行してくれる会社に問い合わせたところ、南アフリカの場合、まれに外務省レベルの証明印?を求められることもあるそう。そもそもそんな必要があるのか?と思いつつ、おそらくこれは、職員によって要求する書類が異なる、ということなのでしょう。

とはいえ、このままでは予定通り結婚することもできなくなってしまう…

 

ここで結婚できないとビザがとれない。しかもビザは日本に一時帰国しないといけない。結婚が遅れると一時帰国もずらさないといけない。そもそも短期ビザが切れちゃうので対策を考えないといけない…等々頭をよぎりました笑


とにかく、何とかしてイミグレーションインタビューをしてもらう以外に道はありません。
(この段階で行政による結婚ではなく、民間の方法も調べましたが、どうやらこのイミグレーションインタビューはいずれの場合も必要になるとのこと)

最終的にどうしたかというと、③-1.2で確認をしてくれた職員を探し出し、インタビューをしてもらうように懇願すること笑
③-2で書類に不備がないと言った彼を説得して、インタビューしてもらいました。
しかし、彼は40-50代で、先ほどの女性よりも職位が上のよう。忙しいなどいろいろな理由をつけて、なかなか私たちのインタビューをしてくれない…

でも私たちも、ここで粘る以外の選択肢はありません。
粘り負けるわけには行けません。
ということで、どうか私たちのインタビューをしてください。とひたすらお願いします。

 

結果、粘り勝ちでした。

怒ってもよいことはないので、「あなたの力が必要なんです」「今忙しいことはわかります。待つのでいつやってくれますか」…
ひたすら下手に出てお願いします。
「仕事があって忙しいんだ!」の一点張りの彼に対し、パートナーが一言
「これ(インタビュー)もあなたの仕事じゃないんですか…?」

これが決め手になりました。
「DONT UNDERMINE ME!」
の一言を吐き捨て、5分後にはインタビューを執り行ってくれました。笑

インタビューといっても、面倒くさいのか、本当は彼がインタビューして書き取るはずの用紙に、私たちに勝手に書くように指示(もはやインタビューじゃないじゃん…)
書類を印刷して、終了。
(結局インタビューはしなかった笑)

作業中「自分のボスは、毎日椅子に座っているだけで何も仕事をしない。上司の分まで仕事が回ってきていやになる」などなど愚痴を吐き捨てていました。
最後はなぜか友達のように、愚痴や仕事についてフレンドリーに話てくれて、終了。


そのあとの④のプロセスは、実にあっさり終了。
証人にパートナーの母親が来てくれましたが、写真を撮りまくって終始和気あいあいとして雰囲気で終わりました。


◆なんでHome Affairsはこんなに悪名高いのでしょうか

一連の手続きを経て、なんでこんなにHome Affairsに悪評があるのかが、なんとなく見えてきた気がします。

・必要な書類の一覧がオンラインになく、各役所によって異なる

手続きに必要な書類のリストは、紙でプリントしたものを使用しているようです。しかもタイピングされた文字に、手書きのメモが加えられ、それを再度コピーしていたり…

そのため、支店が違うと必要な書類が違うようです。国のシステムなのにこれでいいの?と思うのですが、これが実態。

しかも手書きで追記したものをコピーしていたりするので、必要書類リストこと、証明印を押してくれ…と思ったことは言うまでもありません。

・書類のOKラインが人によってばらばら

今回も起こったのですが、2階のスタッフと3階のおじさんは証明印なしでOK、3階の別の女性スタッフは証明印がないとダメ。
人によっていうことが違います。 
そもそも上に述べたリストが、何通りかに解釈できる書き方をしていることに問題があるのですが、それをいいことに、どの書類が可なのか、人によって平気で違うこと言ってきます。
それを防ぐためには、提出先の人やインタビュアーに前もって確認することが大切ですが、今回のように確認した人が「多忙」を理由に他の人に確認してもらうように、と指示した場合、せっかく用意した書類が受理されない場合があります…
あえて手続きをアンクリアにして、いちゃもん+賄賂をもらう余地を残しているのでしょうか?(本当にやめてほしい…)

・職場環境が悪い

見たところ、同じ部署でも、特に世代が違う人同士、全く会話はなく、面倒くさいインタビューなどの業務はたらいまわしにする傾向があります。 

とりあえず「待機」の時間が多いです。

作業を後回しにするだけですし、文句を言ってきた市民との対応時間が増えるので、誰得?と思ってしまいますが、こうした論理は通じない模様。


◆これから南アフリカで役所とやり取りする人へ

と、冷静に書き起こすことで、落ち着きましたが、実際にHome Affairsで待っている間は、そんな冷静でいられませんでした。

いや、どう考えても論理的におかしいでしょ!っていう手続きがあったとしても、なんか、ダメなものはダメ見たいです…

南アフリカやアフリカの役所とやり取りする予定がある人へ、少しでも心の準備の参考になるといいなと思い(そして未来の自分に対してのリマインダーとしても)、ポイントを紹介します!


・ネットの情報を信用するな

上記にある通り。大体オフィスで印刷された紙が真です。手書きでメモも加わります。実際に出向いて、自分が関わる支部で直接情報を得るのが確実です。

・書類はとりあえず証明印をつけよ

ハンコはなくていいよ、といわれても、いつどこでだれが証明印を要求してくるかわからないので、用意できるのであれば、とりあえずハンコつけておくことが安心です。

いちゃもんの余地をなるべくなくしましょう。

私たちも、念には念を、ということで証明印をつけておけばよかった…と思った次第(でもその場合「外務省の印がいる」とか言われたりして笑、わかりませんが)

・確認した人の名前を憶えておけ

すべての工程は、俗人的に行われます。確認した相手の顔と名前を覚えておくことは、のちの自分の身を守ることにつながります。

これに関しては、南ア人のパートナーが徹底していました。

・とりあえずへりくだって、ご機嫌を取れ

これは、日本人には難易度が高いかもしれません。

私もつい、論理的に「この書類を受理できるはずだ」「あなたは私たちを対応する必要がある」「この工程に何の意味があるのか」と口に出しそうになってしまったのですが、パートナーに強く止められました。

彼に言われたことが以下。

高圧的な態度をとり、自分を大きく見せたがる人が多いお役所。年功序列が残っているため、年配で権力を持っている人が多くいます。しかし、そうした人の多くはアパルトヘイト下で青年期をすごしたため、中卒など学歴がない人が多いといいます。そうした人は、同じ部署の若い大学卒の部下や、学のある若手に対して劣等感や苦手意識を持っている場合が多いそう。
あまりインテリジェンスな切り返しをせず「あなたの助けが必要なんです」という姿勢を続けるほうが、結果的に物事が早く進むとか。
要は「仲良く」なり「ご機嫌」を取ることが大切とのこと。

パートナーは、自分の実家の地区(プレトリアの高級住宅街)を言うこともためらっていました。特権階級にあり、学歴のある若者に対して、あえていちゃもんをつけてくる人が多いからだといいます。

 

それにしても、これがHome Affairsの悪評の由縁か…と身をもって体感しました。
きっとあの役所に行った人それぞれが、エピソードを持っているはず。
同じように外に追い出されたり、朝8時から16時までたらいまわしにされている人を何人も見ました。(無駄に仲間意識が生まれる…)

 

これらはあくまで一個人の経験・意見ですが、役所の手続きが少しでもスムーズに、そして汚職について考えるきっかけになればと思います。

 

おしまい。