動機はいつだって不純

南アフリカ・ヨハネスブルグで暮らすノマドワーカーのつぶやき

【南アフリカの多様性とインクルージョン】アフロヘアのもつ意味

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先日、勤務しているタイガーモブのプログラム「アフリカDiversity Camp in ヨハネスブルグ」の第2期が終了しました。

南アフリカは、1994年に初の民主的選挙が行われ、ネルソン・マンデラが大統領になったころから「レインボー国家」と呼ばれるようになりました。

実際に、ヨハネスブルグの街を歩くと、特にビジネス街は、さまざまな肌の色の人が歩いており、それぞれの宗教や民俗を象徴する服装の人も多くみられます。

ただ、ひとたび旧黒人居住区(アパルトヘイト時代)のタウンシップやダウンタウンに行くと、いわゆる人種の構成が一気に変わるのも南アフリカの特徴です。

 

エリアによって(場所によっては区画によって)雰囲気が大きく変わるので、ヨハネスブルグに1泊だけして、1部分だけを見る人は、どこに泊まるかによって、印象は大きく変わると思います。

プログラムでは、ヨハネスブルグの様々なエリアに実際に足を運び、多様性の観点で、様々なバックグラウンドや年代の人に話を聞きました。

 

第1回目の時から、少し改良を加え、

多様性とは?アイデンティティとは?格差とは?治安とは?政府とは?

などなど考えを巡らせる時間になったと思います。

参加者も、20代から40代まで、学生から経営者までいて、価値観や考察を深めることができたのではないかと思います。

 

Divesity and Inclusion(多様性と包括性)について講義をしてもらいました

今回の新しいコンテンツとして、南アでコーポレート向けに研修やレクチャーをしているコンサルタントの方に、ビジネスシーンでの多様性と包括性について講義をしてもらいました。

南アフリカには、他のアフリカ諸国に比べ、規模の大きなコーポレートが多いので、コンサルティングファームや、専門性を付けた独立コンサルタントの方も多くいます。

普段仕事をしているWeWorkのオフィスを借りて、オープンイベントという形で「Diversity and Inclusion」をテーマに講義をお願いしました。

 

▼お願いしたファームはこちら

www.cohesioncollective.com

 

世界中で議論される「多様性」

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日本も例にもれず「多様性」とは何か、について議論されることが多くなってきています。

2019年に行われたラグビーワールドカップでも、「多様性」という言葉が良く聞かれたように、これから社会がどんどん多様になっていく流れを感じています。と同時に、どのようにして「多様な社会」を作っていくのかが、議論されることが増えましたよね。

 

南アフリカでは、植民地時代から今まで、多様なバックグラウンドを持った人が一緒に暮らしてきました。

長年にわたって、常に「多様」であり続けた南アフリカ人。

アパルトヘイトが終了して、今、議論になっているのは「多様性」ではなく、この多様な人々が存在する社会が、どのように「Inclusive」になっていくのかということだといいます。

包括性のある社会を作ることが、喫緊の課題となっているのです。

 

だた単に全員に扉を開けるだけでは、インクルーシブな社会は作れない

細かい講義の内容にはここでは触れませんが、ようは単に多様な人がいるだけでは、多様な世界は作れないというのです。

特に南アフリカの場合は、それまで白人でストレートの男性が中心の社会でした。

特定の場所は、「劣等」とされていた人種の人は入れず、ビジネス界に進出する女性も少なかったのです。

いざみんなに扉が開かれていても、特定のバックグラウンドや人種、性別の人にとって心地よい環境が、すべての人に対して心地よいとは限りません。

 

学校では髪の毛と「きちんと」束ねないといけないのか

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アパルトヘイトの時代、人種によって学校は分けられていました。

特に黒人には高等教育は不要とされ、数学や化学といった教科はカリキュラムから削除されていました。

1994年以降、すべての人種に学校が開かれましたが、校則は変えられなかったのです。

女子生徒への校則の一つが、髪の毛に関するもの。

学校では長い髪は「きちんと」束ねないといけません。

しかし、黒人特有の「アフロヘア」は、学校の言う「きちんと」した髪型に入らない、としてある女子生徒が抗議をし、ニュースとなりました。

この学生運動がきっかけで、学校の校則が変化したといいます。

 

パートナーにも聞くと、アパルトヘイト以降、校則に対する見直しが入り、女子生徒もパンツスタイルで登校できるようになったり、制服の型も様々な体形にあったものが作られるようになったといいます。

私も南アフリカに来て気が付きましたが、女子生徒でもハーフパンツやロングパンツで登校している人が多く、選択の自由があっていいなあと思いました。

 

アフロヘアのプロパガンダ

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オープンイベントだったので、WeWorkに入居している企業に勤めるモザンビーク国籍の女性が興味深い経験をシェアしてくれたので、書き留めておこうと思います。

いわゆる「黒人」「女性」の方で、貿易に関わるビジネスをしているので、アメリカやヨーロッパなど、海外に行く機会が多いそうです。

そこで気が付くのは、彼女のナチュラルな髪型である、アフロヘアに対する周りの反応だといいます。

特に欧米の「白人」の方は、アフロヘアをしているときは、彼女から距離を置いたり「この人は、白人のことが嫌いなのかな」といった恐れに近いような態度を取られることがあるといいます。

日本では、このようなイメージを持っている人は少ないですが、アフロヘアは政治思想や「パン・アフリカニズム」と結び付けて考える人もいるそうです。(実際にパン・アフリカニズムの人は、アフロヘアであることが多いそうです)

彼女は実体験として、ナチュラルなアフロヘアで旅した時と、ブレイズやウィッグをして旅した時の周囲の反応の違いを感じていました。

 

また、彼女は年始に日本にも訪れていたようですが、日本ではそのような思想と髪型を結び付けて考える人がほとんどおらず、むしろ「髪型かっこいい!」とほめる人が多くて驚いたそうです。

私たちは、無意識に意味づけしている

少し話がそれましたが…

異なるバックグラウンドを持っている人が、快適に過ごせる、インクルーシブな社会を作るためには、お互いの立場を鑑み、歩み寄ることが大切です。

でも、その大前提として大切なのは、上の例にあったような、特定の国籍や人種、容姿の特徴、性的思考、年齢、あるいはそれらの組み合わせに対して無意識に持っている「先入観」、無意識に意味づけしていることに気が付く必要があります。

 

いかに自分が差別的な人間じゃない、と思っていても、無意識に意味づけしていることはだれしもあると思います。

私自身も、いわゆる「黒人」であるパートナーを持っていますが、Airbnbのホストをしているときに、無意識に若いドイツ人の男性を泊めるときと、40代くらいのジンバブエ人の男性を泊めるときと、後者のほうがなんとなく「怖い」という感情を持っていることに気が付きました。

自分の中のバイアスに意識的になることは、簡単ではないですが、インクルーシブな社会を作るためには、大切な一歩なのかな、と感じた時間でした。

 

 

また、気が向いたらいろんな気づきを書いていこうと思います。

では。