動機はいつだって不純

南アフリカ・ヨハネスブルグで暮らすノマドワーカーのつぶやき

スラム?貧困地域?南アフリカのタウンシップ(旧黒人居住区)とは?

そろそろ毎日ブログを書くときに、何日目か確認しないとわかんなくなってきました。

ロックダウン10日目のヨハネスブルグからお送りします。

 

2日間降り続いていた雨がやんで、頭痛も治ってすっきりした朝を迎えました。

ランニングを朝と夕方2回して、筋トレもしたので体が痛いです。

 

 

 南アフリカのタウンシップについて

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今日は、ロックダウンとあんまり関係ないことを書こうと思います。

南アフリカに住んでいる日本人でも、アフリカンコミュニティから遠い人は、あまりちゃんと理解していない人も多いような気もするのと、日本語ベースでしっかりとした情報があまりないので、この機会に「タウンシップ」について書いてみます。

 

―タウンシップ

 

南部アフリカや南アフリカに関わったことがない人であれば、あまり聞き覚えのない言葉かもしれません。

ここで、日本語のWikipediaなんかを参照しようかと思ったら、そもそもWikipediaページがありませんでした笑(もちろん他の言語ではありますよ)

 

南アフリカ観光局のWebサイト にはこうあります。

かつてアパルトヘイト時代に黒人専用の居住区として指定されたタウンシップと呼ばれる地域

 

英語のWikipediaにはこう書かれています。

In South Africa, the terms township and location usually refer to the often underdeveloped racially segregated urban areas that, from the late 19th century until the end of apartheid, were reserved for non-whites, namely Indians, Africans and Coloureds.

 要は、19世紀以降アパルトヘイト政策が終わるまで、つまり人種によって居住地が分断されていた時、白人以外の人種に割り当てられた居住区のことです。

 

主に都市部や街の近郊に作られることが多く、中心地には”白人”の人たちが住みました。

経済活動は主に街の中心部で行われていたので、タウンシップに住む非白人の人は、タウンシップから都市部に通勤に行ったり、そこから更に郊外の炭鉱で働いていたのです。

タウンシップの近くには、鉱山や発電所など、いわゆる都市部には置きたくない施設があったのです。

 

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タウンシップでの結婚式。コミュニティを上げてお祝いしていた

 

タウンシップの街の作り方には特徴があり、他の地区と違い、道路の幅が車1台分だけなんです。

なぜかというと、アパルトヘイト時代、タウンシップの住人は基本的に車を持っていませんでしたが、白人政府がパトロールして街をまわるために、パトカー1台分だけ通れる道路が作られたそうです。

 

一度プレトリア郊外にあるタウンシップでの結婚式に参加したことがあるのですが、確かに道路が一車線だけでした。

 

アパルトヘイト後のタウンシップ

アパルトヘイトが終わって26年たった今でも、タウンシップと呼ばれるところはあります。

 

半世紀ほど続いたアパルトヘイト。タウンシップの中にはコミュニティができているし、持ち家を持っている人もいます。

また、都市部に引っ越そうと思っても、経済的に簡単にタウンシップを出れるわけでもありません。

もちろん昔のように、非白人だけが住むところではありませんが、タウンシップから街に移住する動きはあっても、逆の動きはほとんどないので、実質今でも黒人の人が多く住むエリアになっています。

 

また、タウンシップの多くが、人種による隔離が目的に作られているので、経済的合理性があまりないところに建設されているのです。

 

仕事場を含め、多くの経済活動はタウンシップの外にあり、タウンシップ内は寝るためのもの。今でも、住宅地のほかに、目立った経済活動がないことが多いです。

 

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観光客でにぎわうSOWETO

 

ヨハネスブルグ近郊にある、南アフリカ最大のタウンシップ、ソウェト(SOWETO)には、ネルソンマンデラの家や記念館などがあるので、観光客が訪れるため、お土産屋さんやレストランなどがありますが、ほとんどのところはそうではないようです。

 

タウンシップはスラムではない

ちなみに、これが良くある勘違いなのですが、タウンシップはスラムではありません。

とはいえ、途上国を旅したり、国際協力に関心がある人であれば、良く耳にする言葉だとは思いますが、あまり定義を知られていない言葉なので、意味をちょっと復習します。

Wikipediaの解説を引用してみましょう。

都市部で極貧層が居住する過密化した地区のことであり、都市の他の地区が受けられる公共サービスが受けられないなど、居住者やコミュニティの健康や安全、道徳が脅かされている荒廃した状況を指す

ということで、タウンシップは都市部から切り離されて郊外にできた居住区であることと、ほとんどのタウンシップでは公立の学校など行政サービスもあるので、スラムとはまた異なるのです。

 

写真を見ても、タウンシップを単に「スラム」と呼ぶのは違うかな、と感じると思います。

SOWETOの写真や、

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SOWETOにあるバックパッカー宿

 

私が結婚式に参加したタウンシップの写真。

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結婚式の入場シーン

 

経済的に意味のないところに建設されていること、お店がほとんどないことを除けば、パッと見た感じ普通の街のように見えますよね?

 

タウンシップ内でも格差がある

とはいえ、タウンシップの生活が思ったよりもいいよ、と言いたいわけではないのです。

 

「黒人居住区」「スラム」というとイメージするような、トタン屋根でてきて、電気の通っていないようなエリアもあります。

タウンシップの中にも、フォーマルな住居と、インフォーマルな住居が混在しているのです。 

 

 

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SOWETOの一部にあるZozoと呼ばれるトタン屋根でできた家。もちろん電気や水道はない

先ほど写真を載せたSOWETOも、スラムのようなShack(アフリカンローカルはZozoと呼ぶ)と呼ばれるトタン屋根でてきた小屋が立ち並ぶエリアもあります。

 

タウンシップに住んでいる人が家を増築したり、田舎や外国から出稼ぎに来た人が家を建てたりする際に、このようなZozoスタイルになることも。

当然水道はありません。電気も正式には通っていませんが、さまざまな方法で違法に電線から引いてくるので、電気は使えることが多いそうです。

 

ヨハネスブルグにある高級住宅地で、駐在員の方も多く住むエリアにShandton(サントン)地区というところがあるのですが、そのすぐ隣にあるタウンシップがアレクサンドラ(愛称:アレックス)。
アレックスは、タウンシップの中でも特殊で、都市に隣接してあります。

そして、アレックスの大部分がスラムのようにZozoでできており、人口密度がものすごく大きいことで知られています。

 

駐在員の方なんかでは、このアレックスだけを見て、タウンシップ=スラムと思っている方もいらっしゃるようです。

 

プレトリアの郊外にあるようなタウンシップは、ほとんどがフォーマルな住居であることも。

 

 

南アフリカのスコッター

ちなみに、では南アフリカではそんなに大きなスラムや、スコッターと呼ばれるような不法占拠された場所はないのか?というと、もちろんそんなことはありません。

南アフリカでスコッターというと、タウンシップではなく、都市部の旧白人地区(CBD:Central Business Districtと呼ばれるエリア)に多くあります。

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ヒルブロウ地区にあるポンテタワーの内部。かつてはギャングにハイジャックされていた。

当時栄えていたエリアで、ビルが立ち並んでいるのですが、アパルトヘイトが終焉した後、そのビルが廃墟になったり、そこがハイジャックさたりして、急速に治安が悪化する原因にもなりました。

 

今でもどの都市も、CBDと呼ばれる辺りは治安が良くないところが多いので、土地勘のない人は近寄るべからず、です。

(そして土地勘がでてきたら、近寄りたくなくなります)

 

タウンシップの人々と都市部

いろいろ書きましたが、タウンシップがあまりいいイメージを持たれていないのは事実です。

同じ南アフリカ人、黒人であっても、タウンシップの外に住んでいる人からすると、あまり近寄りたくないエリアだと認識されているようです。(パートナーのいとこは、SOWETOには夜絶対行きたくない、といっていました)

 

とはいえ、都市部に住んでいる人のサービスは、タウンシップの人々に支えられています

清掃員やスーパーのレジ、カフェやガソリンスタンドの店員など、タウンシップから来ている人がすぐ隣にいるんです。

 

タウンシップとロックダウン

そんなタウンシップ。

貧困層が多く、比較的人が密集して住んでいます。

ヨハネスブルグのあたりだと、アレックスやSOWETOの一部は、かなり人口密度が高いので、感染症のリスクはものすごく高いです。

 

高速道路など、街の中で警官を見かけることはほとんどないのですが、ニュースを見る限り、タウンシップやCBDのあたりに配置されているようです。

 

アレックスではコロナの感染例もでているので心配です。

www.businesslive.co.za

 

ヨハネスブルグ近郊にあり、私も何度か訪問したことがあるSOWETOのこともニュースになっていました。

 

 

 観光地にもなっているSOWETO、経済的にも打撃を受けているようです。

 

 

最後に、南アフリカ2つの経済があるといわれています。

前に赴任されていたJICAの専門家の方も、先進国と途上国が同居しているという表現をされていましたが、裕福な層と貧困な層があり、その溝がものすごく深いのです。

所得の不均衡を表すジニ係数は、世界で一番悪い。つまり世界で一番経済格差がある国です。

でも、そんな2つの経済は、相互に依存しています。

 

下の記事、結構興味深かったので、関心のある人は読んでみてください。

ある実業家は「ロックダウンも悪くないね?」とツイート。

一部の裕福な層は、何を料理するかに悩み、犬の散歩ができないことに文句を言い、お酒やたばこを探しているけれど、このロックダウンによって、それどころでなく飢え死ぬか否かの瀬戸際にいる人が大勢いるのです。

 

www.iol.co.za

 

長くなりましたが、こんなところで。

そんな私も、ロックダウンはそんなに悪くない、と思い、日々の料理に悩んでいる人間です。