動機はいつだって不純

南アフリカ・ヨハネスブルグで暮らすノマドワーカーのつぶやき

ヨハネスブルグ一(いち)治安の悪いと言われるヒルブロウに2回行ってみた【動画・画像あり】

以前、ヨハネスブルグの治安について記事を書きました。

yukaban.hatenablog.com

そこでも"ヒルブロウ (Hillbrow)"はとりわけ危険、とヨハネスブルグ在住の南アフリカ人もみんな口をそろえていう場所です。

Wikipediaでも"危険地帯"と書かれ、インターネットでも数々の犯罪報告が上がっています。

ヒルブロウ - Wikipedia

 

でもそんなヒルブロウに2回行ってみました。

1回目:車で通ってみた

2回目:ツアーに参加してみた

実際のヒルブロウは、ギャングが住み着き、外国人が一人で歩けないような凶悪地区なのでしょうか・・・?

 

1回目:車で通ってみた

南アフリカ人の運転する車でヒルブロウ地区を通ってみました。

youtu.be

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他の地区に比べて圧倒的に人口密度が高いように感じました。

しかし想像していたよりも普通の街・・・

ヒルブロウにはバスや電車のターミナル駅のような場所があります。飛行機を使う場合は通る必要は内のですが、近隣のアフリカ諸国から陸路でヨハネスブルグに来る場合、

車で10分ほど通っただけなのに、白人の方を何人か見かけました。ヒルブロウも変わってきているのかも知れません。

車を運転してくれた南アフリカ人は、車で通りすがったことはあるものの、ヒルブロウに行ったことはないと言います。

ヒルブロウは売春で有名であるため、そうした目的で外から人が来ることがある以外、そこに住む人以外だとほとんど寄りつかない場所なのだそう。

 

2回目:ツアーに参加してみた

車で通ってみたし、ネガティブな情報を聞いたのですが、日本人ブロガーのきたむさんのブログを見て知った、ツアーに参加してみました。

いろいろ聞いたけど、やっぱり自分の目で見てみたい!そこに住む人の話を聞いてみたい・・・そんな好奇心からでした。また、ツアーのディレクター等を見てみると、黒人ではない人もいます。ひとりではとても歩くことはできないと思ったからこそ、ツアーに参加しようと思いました。

▼ツアーのサイトはこちら!

Dlala Nje - Site

▼参考にしたブログはこちら!

wakajps.com

さて、私が参加したツアーはThis is Hillbrowツアー。

ポンテシティタワー→ヒルブロウの町歩きのコースです。ランチドリンク1杯がついてきて、350ランド。2018年10月のレートで2500円強くらいでお安いです。

 

それでは、ツアーの中身をダイジェストで紹介しようと思います。

集合はポンテタワーにあるDlala  Njeのオフィス。ポンテタワーは、かつてはギャングの住処とされ、危険地帯といわれていた悪名高いところでもあります。

この日はオーストラリア人のカップルとドイツ人のカップルがいました(カップルばっかり笑)。

ツアーガイドをしてくれるのは、ヒルブロウ生まれのグラントさん。この日はツアーガイド見習いのゲイビーくんも同行していました。なんとこのゲイビーくん、ポンテタワーの住人だそうです。

まずはポンテタワーを登ります。

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ポンテタワー入り口の警備は厳重です

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エレベーターにのります。54階もあるので、エレベーターもスピーディー。



 

52階のオフィスで、まずはポンテタワーで歴史のお勉強。

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オフィスはめちゃめちゃおしゃれ。ここでイベントを開催することもあるそう!

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オフィスからの眺め。ヨハネスブルグが一望できます

 

ヒルブロウは、アパルトヘイト下では実は白人の居住地でした。ビジネスの中心地で、日本で言うと六本木っていう感じ。このポンテタワーも高級住宅地として、白人の人々が住んでいました。

しかし、アパルトヘイト後期、1980年代になると、カラードと呼ばれる混血の人々やインド系、後に黒人までもがこの地域に流入してくるようになりました。アパルトヘイト法によってあてがわれた土地で住宅が不足してきたのっが主な原因です。後にヒルブロウは、カラードやインド人の居住が許された"Mixed are"となります。1985年には、ヒルブロウの3割ほどのアパートには、カラード・インド人・黒人が住んでいたといいます。そのため、アパルトヘイト時代で最もオープンマインドな場所だったそう。

その頃、各地で黒人による抵抗運動が盛んになっていました。そして、国際社会からの圧力で、南アフリカの経済は不況に陥ります。

そしてヒルブロウには更に多くの黒人が流入、かつて居住していた白人は他の地域に去って行きました。

警察からも見放され、ヒルブロウはあっという間にギャングの住処に。ドラッグや売春なども横行する、ヨハネスブルグで最も危険な地区となってしまったのです。

 

▼歴史について詳しくはこちら(英語)

bmcpublichealth.biomedcentral.com

ちなみに、その頃のヒルブロウを舞台にした映画がこちら。ツアーガイドのグラントもおすすめ。

www.youtube.com

このポンテタワーも例外ではなく、今のように入り口の警備もないため、ギャングたちの住処になってしまったのです。タワー全体がハイジャックされてしまい、タワーの中心部の空洞になっている部分には、ゴミが蓄積され、14階の高さまで積み上がっていたそう・・・今はたいだい撤去されていますが、ゴミの山の中にはゴミ以外のものもあったとか・・・恐ろしや。

 

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2018年10月現在のポンテタワー内部。まだ砂や瓦礫の山があります。



しかし、変化が起きたのは2010年のワールドカップ開催地に決定したときです。

ヨハネスブルグ中の人がワールドカップをビジネスチャンス、地主の人たちは、自分の資産価値を上げる好機ととらえます。ヒルブロウの地主も例外ではありません。ポンテタワーを蘇らせ、商業施設として観光客向けに解放しよう、と計画しました。そのプロセスはものすごく困難を極めたそうです。ディベロッパーはギャングと直接交渉する必要があるため、命を落とした人もいたそうな・・・

しかも悲しいことに、2008年の世界恐慌のあおりを受け、ワールドカップまでに計画を終えることができずじまい・・・

現在こそ、タワーの外では子どもたちが遊び、一般市民が入居しているポンテタワー。同地区の他の不動産よりも家賃が高く、高級住宅の位置づけです。

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高所恐怖症じゃ住めません・・・

ポンテタワーをでたら、いよいよヒルブロウ街歩きです。

実はポンテタワーはヒルブロウ地区の端っこにあり、ベレアという地区に隣接しています。まずはベレアから歩きます。

この地区は近年急速に治安が良くなっているそうです。これに貢献したのが写真にあるディベロッパディベロッパーが入り、街が新しくなり、地区の至る所に防犯カメラが設置されました。

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ヨハネスブルグの他の地区の再生にも貢献したというディベロッパー。

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写真の建物にも防犯カメラがついています

 

次に向かったのは、ベレアからほど近くの公園です。ちょうど学校が終わる時間ということもあり、子どもたちが遊んでいました。比較的新しくできたようで、公園を囲む柵はリサイクルできない素材でできているそう。金属で作ると、盗難に遭うリスクがあるためです。(ヨハネスブルグでは金属の盗難が多く、おかげで信号が止ったりします・・・)

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ヒルブロウ地区に入ります。

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ガイドがオフラインeBayと言っていた壁。ルームシェアの募集などの張り紙であふれていた

ヒルブロウにある駅は、近隣のアフリカ諸国から出稼ぎにくるひとの玄関口です。そのため、ヒルブロウには随時人が出入りしています。ルームシェアを募集する張り紙が大量に貼られていました。

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ヒルブロウタワーと呼ばれる電波塔。

そしてヒルブロウのシンボルの一つビルブロウタワー。観光客の入場は禁止されていますが、すぐ近くまで行く事ができます。

 

治安が改善してきているといっても、ヒルブロウのあちこちには、未だに犯罪者にハイジャックされた建物廃墟があります。

廃墟はまだ良いのですが、問題はハイジャックされた建物。そこには犯罪者が潜んでおり、日が沈むと犯行にでてくるのだそう。ハイジャックされた建物の近くでは、犯行をしたあとに犯人が建物に逃げ込んでしまうと、警察も手を付けることができないため、犯罪の発生率が急激に高くなります。近くの道を一人で、あるいは暗くなってから歩くことはおすすめできません。

 

こうした建物の他に、ヒルブロウと言えば売春宿が多くあります。

こちらは一見普通のビアガーデン。

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お、ドイツビールが飲めるのね。・・・と思いきや。

この敷地内では売春が行われているそうです。ワールドカップの頃にできた店で、観光客をターゲットにしている模様。

 

またこの建物は、かつての高級ホテル。アフリカ一のアダルト産業の拠点となっています。

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元高級ホテル、現売春宿。広々としたプール付きの高級スポーツクラブがあったらしく、看板の上にはその名残が

しかし、南アフリカでは売春は違法。こうしたお店は他の業種で登録しているそう。日本のソープ街と同じですね。

この建物もホテルとして登録していますが、部屋はいつも満室。売春婦が常に宿泊している状態で、1階のクラブでお客をみつけているのだとか。

最後に訪れたのはプレトリア通り。新鮮な野菜が路上で売られています。

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有名なプレトリア通り。庶民の味方。新鮮な野菜が手に入ります。

ほとんどクレジットカードが使える南アフリカでも、こうした場所では現金が必要。人通りが多いので、スリには気をつけなければいけません。が、野菜も通り沿いの電化製品の店も商品を平積みにしており、特にものものしい警備はなく、人々の活気に溢れていました。

たくさん歩いたあとは、ランチタイム!町中のお店に入ります。

南アフリカソウルフード、パプとチキン・ビーフ、そして野菜。これにビールがついてきます!

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ランチボックス。典型的南アフリカ料理!唐辛子が辛め。

ジュークボックスがあったり、昼から賭け事をしているおじちゃんたちがいました。リアルなヒルブロウライフを体感。

 

最後はポンテタワーのオフィスに戻って終了!

ツアーガイドのグラントは言います。

ヒルブロウは危ない、っていう話だけが一人歩きしていると思うんだ。ヨハネスブルグ南アフリカ人でもそうやって言う人がいるけれど、『危ない』という人に限って、ヒルブロウに来たことがないことが多い。

ここで生まれて育った身としても、ここ最近でヒルブロウは大きく変わってきている。小さい頃こそ、ここで観光客にツアーをするなんて考えられなかったけど。

ツアーを通して、多くの人に本当のヒルブロウを知ってもらいたいと思っているよ」

 

ツアーを通して、参加者の質問にも丁寧に答えてくれたグラント。その熱意に感動しました。

このツアーの主催団体Dlala Njeのツアーは、私が参加したThis is Hillbrow以外にもいくつかのツアーやイベントを主催しています。

 

ちなみにこのツアーの収益は、ヒルブロウに住む子どもたちのためのコミュニティセンターの運営資金になるそうです。

 

ヒルブロウには近隣アフリカ諸国からの移民が多いことから、行政の関心が薄く、学校の運営資金も乏しいのだそう。

 

参加者のほとんどが口コミでやってくるといいます。これを読んだあなたも、ヨハネスブルグに来ることがあったら、ぜひツアーに参加してみてください!

 

ちなみに・・・

ツアーについて書いてある記事。

ツアーガイド見習いのゲイビーも、「あと5年待ってみて!この町は大きく変わるから」と言っていました。

ヒルブロウの治安は徐々に回復してきているようです。

www.dailysun.co.za

 

長くなりましたが、それでは!